透ける着物に裏地はいる?夏の和装を快適にする「居敷当」とは
目次
1. はじめに|夏きものは裏地がない?

夏きものは、透け感のある生地で仕立てられるのが一般的です。
麻や絽、紗などの涼しげな素材は、見た目にも爽やかで、蒸し暑い季節にぴったりの装いです。
しかしそんな“涼しさ”の裏側には、別の問題も潜んでいます。
それが「透け感による不安」や「汗による生地の傷み」、さらには「座ったときの摩擦」による着物の寿命の低下です。
この問題を解決するのが、夏きものにおける「居敷当(いしきあて)」という裏地の存在です。
2. 居敷当(いしきあて)とは何か

居敷当とは、着物の背面部分、腰上から裾にかけて部分的に縫い付けられる裏地のことです。
- フル裏ではなく「部分裏地」
- 主に腰からお尻、太ももの裏あたりにあたる
- 夏きものや単衣、浴衣などに使われることが多い
フル裏仕立てとは違って、通気性を損なわずに快適さを保ちながら、補強や透け防止の役割を果たしてくれる非常に実用的な加工です。
3. 居敷当が果たす3つの重要な役割

3-1. 着物の透けを防ぐ
透け感のある夏きものは、下着や長襦袢の色柄が透けて見えやすいという特性があります。
特にお尻まわりや座ったときに、無意識に目立ってしまうことも。
居敷当を入れることで、その部分だけ透けを和らげ、安心感が増します。
特に白系や淡い色の着物、絽などの薄手素材には効果的です。
3-2. 摩擦による破れやすれの防止
座ったり立ったりを繰り返すうちに、お尻まわりの生地は想像以上に負担がかかっています。
- 椅子との摩擦
- 長時間の正座やあぐら
- 車の座席や階段の昇降時の張力
これにより、生地が擦れたり破けたりすることも珍しくありません。
居敷当は、そういった“負荷の集中しやすい部位”に補強を入れる役割も担っています。
3-3. 汗ジミ・肌への張り付き防止
夏はどうしても汗をかきやすい季節。
直接肌に密着しやすい腰〜太もも部分では、汗によって生地が肌に張り付き、不快感の原因になることも。
居敷当を入れることで肌との接触面にワンクッションが生まれ、快適性が向上します。
さらに、汗ジミが表側に出にくくなる効果も期待できます。
4. 居敷当はどんなときに必要?

「すべての夏きものに必要なの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
実際には、使用頻度やTPO、素材によって判断するのが現実的です。
✅ 居敷当が特におすすめなケース
- 透け感のある白・淡色系の着物
- 絽や紗などの薄手で繊細な生地
- 着席時間が長い場(食事会・観劇など)
- 立ち座りの多い着用シーン
- 麻素材で肌触りが硬めのもの
一方で、普段着の木綿浴衣などで軽さや通気性を最優先したい場合には、居敷当を省略することもあります。
5. 居敷当の素材と仕立て方の選び方
居敷当は着物の一部として縫い込まれるため、選ぶ素材も着物全体の着心地や印象に影響します。
主な素材例
- 正絹:通気性があり、肌触りがよい
- 麻素材: シャリ感があり、涼しく通気性が高い
- 綿ローン: 肌触りが柔らかく、汗を吸いやすい
- 絽や紗の化繊: 薄くて軽量、しなやかで丈夫
また、色は白または着物の色に合わせて目立ちにくいものを選ぶのが一般的です。
仕立て方も、腰から膝上までの「半居敷当」か、太もも中ほどまでの「長居敷当」が多く、着心地や用途に応じて調整されます。
6. 居敷当のない夏きものはNG?

居敷当は必ずしも「絶対に必要」というわけではありません。
たとえば以下のようなケースでは、居敷当なしでも問題ありません。
- 軽く着流すスタイルの浴衣
- 通気性を重視した夏着物の軽装(短時間の使用)
- 下にスリップやステテコを着て、透けや摩擦をカバーできている場合
ただし、見た目の安心感や着物の寿命を考えると「あるに越したことはない」のが現実です。
特に、何度も着るお気に入りの一枚なら、仕立て段階で居敷当を入れることをおすすめします。
7. まとめ|美しさと快適さを両立するために
居敷当は、決して派手なパーツではありません。
けれど、夏の着物生活を快適に、美しく、安心して楽しむための“縁の下の力持ち”です。
✅ 居敷当のまとめポイント
- 見た目の透けを防ぎ、安心感アップ
- 摩擦や汗から着物を守り、寿命を延ばす
- 着心地を快適にし、暑い季節にも気持ちよく和装を楽しめる
夏きものは涼やかで素敵な一方で、生地が薄く繊細だからこそ“丁寧な備え”が重要です。
居敷当を上手に取り入れて、着物ライフをより快適に、長く美しく保ちましょう。